真夏の暑い日、外で棒アイスを持ち歩いても、溶けずに長い時間形状を保つ魔法のようなアイスクリームがある。スタートアップのFULLLIFE(フルライフ、東京・新宿)が生み出した「溶けない!?アイスクリーム」だ。大日本印刷と協業し、2022年1月にはキャラクターの形を3D成形する技術も確立した。おいしさを保ちながらアイスの新しい価値を創造する日本発のフードテックがブレークの兆しだ。
「溶けない!?アイスクリーム」は、FULLLIFEの前身であるバイオセラピー開発研究センター(金沢市)が生み出したものだ。いきなり種明かしをすると、イチゴ果実から抽出した成分「イチゴポリフェノール」を核とする保形性原料(イチゴエキス)を配合することで実現している。
もともとイチゴポリフェノールは、化粧品の液体原料として市場に供給していた。食品素材にもなるため、興味を持ったパティシエが試しに生クリームに入れてホイップしてみたところ、通常よりクリームがホイップしすぎることが判明した。
この偶然の出来事をきっかけに、地元の金沢大学薬学部と連携して研究を開始。そして、アイスクリーム(以下、アイス)に配合すると保形性が向上し、溶けにくくなる事実を発見したのだ。開発したイチゴエキスを用いたアイスクリームの保形性向上技術は、2014年に特許を取得している。
原理はこうだ。一般的なアイスは、時間が経過すると水分と油分が分離して溶け始める。だが、イチゴエキスを配合すると、水分と油分の分離を防げるため、溶けにくくなる。さらに、アイス内の小さな気泡の弾力性が増し、崩れにくくなる効果も加わる。こうして通常であれば、すぐに溶け始めるアイスも、しばらく形状を保つことが可能になる。棒アイスを用いた実験では、25度の環境下で2時間経過しても液だれせずに形を保ったという。
アイスを溶けにくくするアプローチは他にもある。主に寒天やゼラチンを配合する方法で、既に一部の大手菓子メーカーなどが商品化している。しかし、寒天を用いるとシャリシャリとした食感になり、クリーミーな口当たりが消えやすくなる欠点があるという。ゼラチンは配合方法が難しく、保形性のために多く入れるとムース状になってしまい、冷たさを感じにくくなる。
一方、イチゴエキスは、原料を加えるだけの簡単な作業で、アイスクリームの食感をしっかり残せる。「特にクリーミーなアイス本来のおいしさを残したまま、溶けにくい保形性を維持できる点が他の原料にはない大きな優位性」と、FULLLIFE代表取締役の豊田剛史氏は話す。
保形性の向上によるメリットは、溶けにくいことだけではない。例えば、キャラクターの型に材料を流し込み、冷やしてアイスにした場合。型から外すときに顔や体部分の凹凸が欠けることなく、しっかり細部まで再現できる。形状の完成度が向上し、視覚的な満足度も高くなるというわけだ。
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